電通総研

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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
こちらは2023年までの電通総研が公開した調査関連のレポートです。過去のレポート記事は、以下のリンクからご覧いただけます。毎年掲げるテーマに即した、有識者との対談、調査結果、海外事例、キーワードなどがまとめられています。
樋泉実氏
電通総研の樋泉実フェロー
ギャラクシー賞「志賀信夫賞」受賞
聞き手:電通総研 プロデューサー 吉田考貴
2020.07.01

# メディア

# 地域


このほど、第57回(2019年度)ギャラクシー賞において、電通総研フェローの樋泉実さんの「志賀信夫賞」受賞が発表されました。ギャラクシー賞は、「NPO法人放送批評懇談会」が、日本の放送文化の質的な向上を願い、優秀番組・個人・団体を顕彰するために、1963年に創設しました。
樋泉さんが受賞した「志賀信夫賞」は、広く放送文化、放送事業の発展に顕著な貢献をした個人を顕彰する賞です。選評では「『地域』を事業設計の基点に置き、ローカル民放局にとっては向かい風となりがちなメディア環境の変化を、智恵と勇気で追い風に変え、ローカル民放事業の可能性を提示し続けた。海外に映像コンテンツによって『アジアに際立つ北海道』をアピールする道を切り拓いて、北海道をアジア有数の観光拠点に発展させた」と高く評価されております。
今回の受賞にあたり、樋泉さんのコメントを紹介いたします。

今回の受賞は「地域メディアへのエール」

ギャラクシー賞「志賀信夫賞」受賞にあたり、お気持ちをお聞かせください。

思いもかけなかった受賞でした。「放送批評懇談会」は、放送人にとっては大事な存在で、特に「ローカル局」や「小規模で奮闘しているメディア」への温かな視線があって、批評対象番組に取り上げてもらうことが、制作者やメディアを勇気づけ、鍛えられる。加えて受賞すると、制作者本人の人脈が、一挙に全国に広がって、化けていく。そんな経験を何度もしてきました。私自身にとっても学びの場であり、まさに「塾」のような存在でした。
その創設者である志賀信夫さんの名を冠した個人賞を、これまで「日本の放送の価値」を切り拓いてこられたパイオニアの方々が受賞されています。今回の受賞を大変光栄に思っています。加えてこの受賞は「地域メディアへのエール」と受け止めています。「地域メディアにはやるべきこと、出来ることがまだまだある。もっと頑張れ」という、志賀さんからのメッセージだと思っています。

信頼できる情報や地域情報が求められる時代に

電通総研に期待すること、今後の抱負、また地域やメディアに関心のある方々へのメッセージなどをお聞かせください。

電通総研との出会いは創業期(1987年)からです。現在の所長の谷さんが研究員だったころ、電通銀座ビルにあった電通総研のオフィスによく伺っていました。当時、私が「自然ドキュメンタリー」の特別番組を企画構想しており、主役は北海道の阿寒湖の森とアイヌ民族の彫刻家。そのコンセプトづくりに電通総研の方々に参加してもらって、ブレストを重ねました。アイヌ民族の世界観でもある「私たちは自然に生かされている」という思いをドキュメンタリーシリーズのコンセプトにおきました。当時は「自然を守る」という言い方が主流の時代でした。30年余り経過して、時代が追いついてきたと思っています。

縁あって、今年から電通総研のフェローとなりましたが、テーマは「日本の地域社会」です。もうひとつ、私は現在、北海道大学を活動拠点にしており、こちらは実践の場ですが、テーマは同じです。日本の社会はマスメディアとネットが混在した情報空間になってきて、以前にも増して、信頼できる情報や地域情報への人びとの欲求が高まっていると思います。今回のコロナ禍や昨年の台風災害において、そのことを実感しています。
この情報空間の構造変化を東京からのマーケット視点や人口論だけで整理できるのか、東京と各地域は違う構造になっているのではないかと感じています。コロナ禍を経験した私たちは、これからさらに進んで「地方の価値」を再考するべき時代かもしれません。
「地域メディア」もその文脈の中にいると思っています。
電通総研の創業期に共有させていただいたような「次へ」の深掘りの議論ができればと思っています。



樋泉実 といずみ・みのる

電通総研フェロー

1949年山梨県生まれ。1972年慶應義塾大学文学部卒業、北海道テレビ放送入社。メディア企画室長、取締役メディア企画センター長、専務取締役デジタル推進担当などを経て、2011年6月代表取締役社長に就任。2014年6月~2016年5月、日本民間放送連盟副会長。2018年10月北海道テレビ放送取締役相談役、2019年6月同相談役。同年、旭日中綬章受章。
現在、電通総研フェロー。北海道大学 産学・地域協働推進機構 客員教授。

1949年山梨県生まれ。1972年慶應義塾大学文学部卒業、北海道テレビ放送入社。メディア企画室長、取締役メディア企画センター長、専務取締役デジタル推進担当などを経て、2011年6月代表取締役社長に就任。2014年6月~2016年5月、日本民間放送連盟副会長。2018年10月北海道テレビ放送取締役相談役、2019年6月同相談役。同年、旭日中綬章受章。
現在、電通総研フェロー。北海道大学 産学・地域協働推進機構 客員教授。

吉田考貴 よしだ・こうき

電通総研アソシエイト・プロデューサー

1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。

1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。