電通総研

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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
こちらは2023年までの電通総研が公開した調査関連のレポートです。過去のレポート記事は、以下のリンクからご覧いただけます。毎年掲げるテーマに即した、有識者との対談、調査結果、海外事例、キーワードなどがまとめられています。
サステナブル・ライフスタイル意識調査2023
サステナブル・ライフスタイル・レポート2023②

電通総研と電通は共同で、2021年に続き3回目となる「サステナブル・ライフスタイル意識調査2023」を実施しました。調査対象国は、東アジアから日本・中国、西欧からフランス・ドイツ、東南アジアからインドネシア・タイの6か国です。各国18~69歳1,000名で合計6,000名を対象にしています。

本記事は、サステナビリティ推進の責任主体やサステナビリティのために許容できる事柄について、日本の結果を中心に国際比較をしています。

◎調査結果の全体的傾向はこちらをご参照ください。
サステナブル・ライフスタイル・レポート2023  

調査結果

1.サステナビリティ推進の責任は、誰に?

日本では「サステナビリティを推進していくために責任を担うべき主体はどこだと思いますか」という質問に対し、1位は「国・政府」(73.8%)、2位は「地方自治体・地域行政」(39.8%)、3位は「一般市民」(34.8%)、4位と5位には「国内企業」(30.5%)と「グローバル企業」(29.1%)が入りました。

この結果を6か国比較でみると、日本で1位の「国・政府」はインドネシア・中国に次ぐ高さです。2位の「地方自治体・地域行政」は、地域行政の権限の大きい中国・インドネシアに比べると低く、20ポイント程度の差があります。3位の「一般市民」はタイに次いで高いという結果でした。「企業」については、特に「グローバル企業」で国による違いが顕著に出ており、ドイツ(61.0%)、フランス(53.0%)、インドネシア(40.6%)、タイ(32.0%)に次ぐ約3割にとどまりました。これらの結果をみると、日本においては、「国・政府」や「地方自治体・地域行政」がサステナビリティ推進を主導するべきだが、「一般市民」もその責任の一端を担っているという考え方であることがうかがえます。また、「グローバル企業」への期待は現在では3割程度ですが、これが今後どのように変化するかも注目されます。

2.サステナビリティのために受け入れられること

1でみたように、サステナビリティ推進のための責任主体として、日本では34.8%の人が「一般市民」を挙げていました。それでは、人びとはサステナビリティ実現のために、どのようなことであれば受け入れられると考えているのでしょうか。「持続可能な社会の実現に伴い、あなたの生活に影響をもたらす可能性があるもの」について、どれくらい自分が受け入れられるかの程度を尋ねました。

日本で「受け入れる」(「積極的に受け入れる」+「少し受け入れる」計)という回答がもっとも多かったのは「プラスチックの使用制限」(70.2%)で、次いで「環境負荷の高い洋服の購入制限」(68.8%)でした。これらについて日本とほかの5か国との比較をしてみましょう。「プラスチックの使用制限」については、日本では「受け入れる」割合がもっとも高い項目なものの、他国と比較すると低い数値であることがわかります。「少し受け入れる」割合が約半数であることも鑑みると、「積極的に受け入れる」準備はない人が大多数だが、多少の不便は受け入れられそう、と考えている人が多いと言えるかもしれません。また、インドネシアは「積極的に受け入れる」が約7割と高く、プラスチック廃棄物や海洋プラスチックごみへの課題意識の高さがうかがえる結果でした。「環境負荷の高い洋服の購入制限」についても日本は「受け入れる」割合が6か国中もっとも低い結果となりましたが、「プラスチックの使用制限」に比べ、他国と大幅な差はありません。フランスやドイツも「受け入れる」割合は日本と6~7ポイント程度の差であり、これら3か国はタイ・中国・インドネシアに比べてこの項目の受け入れに抵抗感があると言えます。

一方、日本でもっとも「受け入れる」割合が低かったのが「環境税」(38.2%)で、次点が「環境負荷の軽減による商品の値上げ」(44.7%)でした。「環境税」については「積極的に受け入れる」がもっとも多いのはインドネシアでしたが、「受け入れる」割合はタイがもっとも多いという結果でした。「環境税」を「受け入れる」割合が一番低いのは日本、次いでドイツ、フランスでした。「環境負荷の軽減による商品の値上げ」についても同じくインドネシア(28.4%)が「積極的に受け入れる」割合がもっとも高く、次いでタイ(27.8%)が高い結果となりました。日本は「積極的に受け入れる」と回答したのはもっとも少ない6.1%にとどまっており、インドネシアと4倍以上の差がついていることがわかります。また、「少し受け入れる」も加えた「受け入れる」割合ではフランスが日本よりも低い結果となりました。

そのほかに尋ねた項目でも、日本では「受け入れる」の回答が6か国平均をすべて下回っています。牛肉や輸入食品の制限といった食事関連の制限や、再エネ使用によるエネルギーの安定供給の制限、車・水の使用制限といったインフラ関連の制限はどれも生活の変化が不可欠であり、受け入れることにためらいがみられます。特に水の使用制限については、「積極的に受け入れる」「少し受け入れる」の合計が半数を割っていることに加えて、6か国平均との差が20ポイント以上あり、水が好きなように使えないというのは他国と比べても日本では敬遠されてしまうようです。

既出の記事では、日本において「サステナビリティ」は「ごみを減らすこと」とのイメージの結びつきが強く、一般市民は詰め替え商品を買ったり、エコバッグを持ったりなど、生活に無理のない範囲でごみを減らす行動をしていると分析しました。そういった今までの生活の延長線上の行動は、他国と比べても日本は積極的に取り入れていると言えますが、生活の変化や金銭的な負担を強いられるものに関しては、まだ受け入れる用意がないと言えるかもしれません。「一般市民」のサステナビリティ推進責任をもっとも重視していたのはタイでした(1参照)。タイの結果に比べると、同じく「一般市民」が行動していかなければという意識はあるものの、自分ごと化にはつながっておらず、今まで通りの生活を続けたいという日本の人びとのジレンマがみえてきます。

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。

**本調査(各1,000サンプル)の標本サイズの誤差幅は、信頼区間95%とし、誤差値が最大となる50%の回答スコアで計算すると約±3.2となります。国ごとの比較で±3.2ポイント以上あるものは、有意な差があるとみなされます。

調査概要
タイトル:サステナブル・ライフスタイル意識調査2023
調査時期:2023年7月12日~8月21日
調査手法:インターネット調査
対象地域:6か国(日本・中国・フランス・ドイツ・インドネシア・タイ)
対象者:18~69歳 計6,000名(各国1,000名)
調査会社:トルーナ・ジャパン
本調査内容に関する問合せ先
電通総研 山崎・中川・小笠原・小泉・若杉
E-mail:qsociety@dentsusoken.com